『シリーズ日建商事 雑感』 その9
ここで、少し時間を遡ってみたい。
創業直後、当時の山形県では珍しいアンカー施工をしながら、
一歩一歩基盤を築いていた時期の事である。
ある看板業者から頼まれ、4階建の小さなビルに看板を取り付ける作業中の出来事であった。
場所は新庄市の中心街であり、歩道の真上の為にドライブイット
(火薬で特殊な銃を使い、コンクリートにボルトを打ち込む)で施工するのであるが、
打ち込む時にはものすごい爆発音がする。
そこで手はずとして、通行人が通る時は看板屋の社長が呼子を吹いて、
梯子の上の私に「打ち方止め!」の合図をすることになった。
全部で16本しか数はなかったが、最後の1発の時に社長もこれで終了との安堵感からか、
路上をよく見ていなかったようだ。
私は何の合図もないので、最後の1発をドガーンと思い切り打ち込んだ。
瞬間、社長が「あっ!」と叫んだので下を見ると、杖をついたお婆さんが腰を抜かし路上でへばり付いていた。
社長はあわててお婆さんを車に乗せてご自宅まで連れて行った。
私は後始末をしながら何ともなければ良いがと気になっていたが、
間もなく社長が戻って来て無事がわかり、お互いに顔を見合わせて大笑いとなった。
今となっては懐かしい一場面である。
( 続 く )
更新日:2014.6.12